第11回となると、第二段階での新たなスタートという気分で、選考委員の雰囲気に力(りき)が入っているように感じられた。
昨年末から4,819作品を順に読んで○印をつけ、今年になって2度ほど修正し、自分なりの30篇を選んで最終審査の場に臨んだ、が、いつものことながら、自分の推す30篇から大賞が出るや否やは皆目見当がつかない。他の選考委員の意見を楽しみに審査がスタートすると、和気藹々やざっくばらんな雰囲気に、相手の出方を読み合いこだわりをぶつけ合う虚々実々の駆け引きのうちに議論が沸騰し、やがて全員一致の納得する、着地をみるにいたった。
今回の候補作については、11回となった「愛するあなたへの悪口コンテスト」という催しの成熟とともに、作品もまた着実にステップ・アップしてきたという印象を抱いた。候補作全体のレベルが底上げされ、“愛”と“悪口”の溶け合いがあざやかになり、単なる悪口、単なる愛という作品が早々に姿を消していった。そうなると、上層に残る作品の甲乙がつけがたく、群を抜いてインパクトを有する作品の発見がむずかしくなったのは当然のなりゆきかもしれなかった。光の当て方で、作品のイメージや価値が千変万化するのも、あらためてかみしめたこのコンテストらしい特徴だった。
そのあげく、そこからいくつもの意味を汲み取ることのできる作品が、最終的に残ったように思う。一発芸的ファンファーレを放つ作品がトップに躍り出ることはなかったが、さまざまな色合いをもち示唆に富み、「愛するあなたへの悪口コンテスト」の次なるステップへの心強い期待をはらんだ作品を、受賞作として列べることができたように思う。
|