「愛するあなたへの悪口コンテスト」も第十回目という節目を迎え、応募者数もうなぎのぼりの観があり、さまざまなイベントの中における市民権のようなものを、苦折十年にして獲得したという実感がある。
そもそも悪口≠テーマとして打ち出すこの催しは、逆風の中でスタートした。ユーモア、洒落、諧謔、滑稽、含蓄などのさまざまなセンスをまぶし、“悪口”を前面に打ち出した微妙な愛≠フ世界はなかなか認知されなかったと言ってよいだろう。
だが、第一回目のインパクトがまずそんな壁を氷解させ、そのいきおいの持続によって今日にいたる勢いが生じた。絶妙のメンバー構成による審査の激論いや和気藹々の雰囲気の中で、したたかな受賞作が次々に誕生した。
この歴代の受賞作の高いレベルの歴史が、全国的な応募者の信頼をつかんでゆく上での基本だった。したがって審査委員のメンバーは、作品の質の高さが失速することを怖れつつ、今回にいたる審査をつづけてきたと言えるだろう。
身もフタもない悪口≠ノ終始する作品、パターンにとらわれる作品などの中からシャッフルされた受賞作は、さすがとうならされるレベルに達するものも多く、奇怪な発想力に圧倒されることもしばしばだった。
さて、第十回目たる今回の特徴はとはいえば、五頭くらいの馬の写真判定にゆだねられる競い合いであった、という印象だった。大賞となる風格をそなえた作品の僅差での結着と言ってもよい展開だった。そして、けっきょく選ばれた大賞には、簡潔にして複雑な意味を含む、謎めいた作品が選ばれることとなった。しかも、これが高校一年生の作品であったのは、このコンテストにとってもまことに目出たいことだった。
それにしても、最終審査の場面となると熾烈な争いとなり、照明の当て方次第で作品の価値が変わって見えてくる。だが、あげくの果てに大賞となる作品には、選ばれるべくして選ばれた風格がただよっているというのは、これまでの審査と同じ印象だった。甲子園へ進出してから、決勝までのあいだに、急激に成長するチームや選手がいるが、「愛するあなたへの悪口」コンテストにも、それがあてはまりそうだ。この空気感を大切にしつつ、早くも次のステップへの期待をふくらませているというのが、審査員全員の雰囲気でありました。
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